夜になり、瀬織はさっさとベッドに入って寝ようとする。

私はぎこちなさに耐えられず、部屋を出てバルコニーで月を眺めていた。

(いつまでもウジウジしていられないよね。結局行きつく結論は同じだもの)

瀬織を守る。
強いお姉ちゃんになる。

それだけは絶対に変わらない目標だ。

そこに行きつくまでの過程はどうだっていい。

欲しいものは瀬織を守れるだけの力だ。

今は瀬織が受け入れてはくれない。

頑固者同士、譲らないから拗れていた。

瀬織はそれっぽさで嫌悪を前面に出しており、どこまでが本音なのかわからない。

少なくとも嫌われているのは事実だろうが……。

今まではただただ無力だったが、今は”能無し巫女”ではない。

あやかしと戦えるだけの強さを得た。

先へ進めないのは、私が勝手に被害妄想をして、逃げているだけ……。


手のひらを器にすれば、ポタ、ポタと水滴が落ちていく。

一度擦り傷が出来てしまえば、治るまでに時間がかかる。絆創膏を何枚も重ねていたのに、どんどんめくれて傷がむき出しになっていた。

声を押し殺してしゃがむしかない。

大きく輝く月が私を隠してくれないから、憎たらしいと喉をしめる。

もうすぐ満たされる月に対し、私の心は欠けたまま。

「どうすれば瀬織は笑ってくれたのかな?」