「そうですね。わたくしたち、生まれつき目が見えないのです。あまり見て気持ちの良いものでもないのでこうして眼帯をつけているだけですよ」

「まぁ、そうだったんですね。姉妹とは事前に知っておりましたが、眼帯がなければわかりませんでしたわ」

さらっと答える瀬織は答え慣れている。

私のいないところで聞かれることが多いのかもしれない。

私と瀬織は姉妹と思えないほど似ていないので、誰もが関係性を気にする。

左右の眼帯があるから、双子と認識してもらえるようなものだった。

(瀬織はお母さまにそっくり。目の色が同じじゃなかったら私だって信じられないもの)

藤色の瞳が私たちを繋いでいる。眼帯に隠した瞳があるから双子だと信じられる。

それ以外に私たちを繋ぐものは、一つもない……。


「白峰家はどちらが継ぐか決まっていますの? 巫女の家系は女性が当主になりやすいと耳にしております」

瀬織と話したことのないデリケートな問題だ。

私はずっと”能無し巫女”であり、弓巫女としては論外だ。

次期当主は瀬織と言われており、考えるまでもなかった。

今は悩むことが変わった。弓巫女でない私は一体何なのか、と。

「白峰家はわたくしが継ぎます。姉には当主になれるだけの能力がありませんから」


言葉が突き刺さる。

瀬織はわざとトゲだらけの言葉で外堀を埋めていく。

巫女としての瀬織は強く美しい。

山で瀬織の素晴らしさを叫び、コダマが返ってきたら会話をしたくなるほどに尊敬している。

だからわざわざ劣等感をあおるようなことは口にしなくていいのに、と罪悪感を抱く。

どんなに言葉が氷の雨となって降りかかっても、瀬織というだけでそれは甘い刃にしかならなかった。

「ずけずけと聞いてごめんなさいね。あ、そうだ。お二人とも、薬湯に入りませんか?」

「薬湯?」

「あやかし退治でお疲れでしょう? たまには身体をあたためて、ね」

珍しい造りの風呂だから楽しんでほしい、と亜照奈が薦めてくるので私も瀬織もぎこちなくうなずいた。