「こういうのが帝都では流行っているのですか?」

瀬織の問いに亜照奈はニコニコとうなずく。

「私のまわりではそうですね。異国のお友達が多いからかもしれません」

「異国……」

「お友達といってもよくわかりませんわ。どうしたって価値観が異なりますし」

人によってどう感じるか分かれる繊細な面。

亜照奈がポツリと悩みを口にする。

どこまでお互い本心で接しているのかわからず、言葉に悩むことが多いそうだ。

帝都を守る国都家の娘。

上辺だけの付きあいなのでは、と疑心暗鬼になっていた。

「瀬織さん菊里さんとお話できてうれしいですわ。とっても新鮮な気持ちですの」

そう言われると悪い気はしない。

私も勇気を出してよかったと、満たされる想いだ。

亜照奈の声かけがなければ、瀬織の女の子らしい顔を見ることはなかった。

流行りのファッションを楽しみ、普通の女の子みたいに珍しい遊びをする。

甘いものを頬張り、安らいだ微笑みを浮かべているのは貴重な姿。

巷で流行りだしているパンケーキとやらに蜂蜜をたっぷりかけて、口に運ぶ姿は花が咲いたようにあいらしかった。

スイーツで腹が膨れたところで、国都家の庭園を散策する。

庭師によって整えられた西洋式の庭は、白峰家の古風なものとまったく違う。

全体的に曲線をえがくのに対し、国都家の庭は四角く切り取られた規則正しいものだった。

「キレイですね。これはバラですか?」

少しずつ緊張がほぐれ、亜照奈との会話が増えてくる。

桜や梅、椿はよく見かけるがバラはあまり見ないので、一面に咲き誇る鮮やかさは目を見張るものがあった。

「えぇ、秋バラですわ。私、バラが一番好きなんですの」

「どうしてですか?」

問いを投げかければ、亜照奈がポッと頬を赤らめる。

「愛の花ですから。ご存知ですか? バラは本数によって愛情の表現が変わるんです」

「愛情の表現……」

思い出したのは遊磨からの求婚だった。