国都家のメイドがテキパキとカメラを設置し、私たちをバルコニーに並ばせる。

「それでは撮りますよー」

合図とともに、私と瀬織はカッと目を開いて亜照奈の頼みごとを遂行した。

「見ざる!」
「聞かざる!」
「言わざる!」

亜照奈、私、瀬織の順に決め言葉を発し、ポーズをとる。

私は耳をふさぎ、照れつつも笑顔を固定し、カメラのレンズを見つめた。

(うう~ん。結構長いぞ~?)

「あの……これはいつまで?」

ポーズを維持するのはなかなか大変なもので、二の腕がプルプルと震えだす。

瀬織は口元を隠しているが、生真面目に応えて完璧な笑顔を浮かべていた。

とはいえ、あまりに長いポーズ意地に困惑し、問わずにはいられなかったようだ。

亜照奈は「ふふふ」と笑うだけで、どんな目をしているかは手で隠され見えなかった。

ようやく解放され、その場にしゃがみ込む。

「写真になるまで時間がかかりますわ。現像出来たらお渡ししますね」

あやかし退治で使う筋肉とは違うので、はじめての疲労感に腕を揉む。

女の子の遊びとは骨が折れるものだと学んだ。

応接室に戻ると、今度は甘いもの尽くしと宝石のようなスイーツが運ばれてくる。

艶めくフルーツに、香ばしい焼き菓子。

巫女として口にしてきたのは甘いもので金平糖、一度遊磨にチョコレートやらを分けてもらったくらいだ。

口にふわふわのスポンジケーキを運ぶと、極楽浄土に行ったかと錯覚するほどに甘く幸せな気分となった。