「およずれごと、射るが務め! かくりよへ帰れ!」

言霊を口にしてもやはり巫女の力は宿らない。

矢は巨体鳥の眼に直撃し、視界を奪うことに成功した。

(やった!)

あやかし退治に真っ当に貢献できたと、爽快な気分にガッツポーズをとる。

それも一瞬のこと、巨大鳥は絶叫をあげながら血を振りまき、私に一直線に向かう。

「菊里!?」
「キャアアアアアアッ!!」

目ん玉一つつぶしたところで巨大鳥は簡単に怯んでくれない。

何の力も持たない私の渾身の一矢はしょせんかすり傷だ。

巨大鳥のかぎ爪が岩場に衝突し、足元が崩れて私の身体は岩とともに落下する。

瀬織の急いた叫びを聞いて、皮肉にも私の口角は緩んでいた。



――落ちていくなか、真っ白な光が巨大鳥を飲み込むのを見た。

瀬織が巨体鳥を倒したとわかり、私は安心して目を閉じる。

「ごめんなさい。お母さま……」

遠ざかる瀬織に想いをはせ、母と重なる顔立ちを思い描いた。

私と瀬織を繋ぐのはオッドアイ。

眼帯で覆った右目が熱くなり、焼け死ぬような感覚に光は閉じた。