亜照奈との話し合いでは、今後の帝都でのあやかし出没時の対応や、避難民の保護について意見交換をした。

人々の安全を守る巫女の視点とは別に、亜照奈の積極性は非常に刺激となって、有意義な時間を過ごせた。

そうして日が暮れる前に国都家を出ようと、席を立つ。

「それではわたくしどもはこれで失礼します」

話し合いの結果を白峰家に持ちかえって、また改めて帝都におもむくことで話は終わる。

用件は済んだと瀬織が区切りをつけると、亜照奈が慌てて立ち上がり、物寂しそうに視線をチラチラ向けてきた。

「もうお帰りに?」

「? はい。元々ご訪問が目的でしたから」

「そうですか……」

晴れやかに笑っていた亜照奈が、今は寄る辺ない微笑みを浮かべている。

まつ毛が伏せると、色白の肌に影ができ、少しだけ私たちとは顔立ちが異なることに気づく。

(亜照奈さんって、異国の血を引いているのかしら?)

透きとおる肌は、日に当たることを知らないほどにキレイだ。

例えるならばシルクだろうか。
瀬織が凛とした美しさならば、亜照奈は儚さのある清楚さに見惚れてしまう。

陽気で活発な美男子の遊磨と、女神を連想させる美の化身・静芽。

この部屋の中には美形しかいないと、おぼこい顔をした私は落胆した。

「あの」

亜照奈が唇をきゅっと結び、強張った目をして私たちを一瞥する。

どうしたのだろうと首をかしげると、亜照奈は意を決して思いの丈を叫んだ。

「今日は! 我が家に泊まって行かれませんか⁉」
「えっ……?」

唐突な申し出に瀬織は目を丸くする。
想定外の誘いだったようだ。

一方、勇気を出したものの瀬織の反応に亜照奈はバツが悪そうにうつむいてしまう。

瀬織への愛で連敗記録更新中の私には亜照奈の気持ちが痛いほどわかる。

居ても立ってもいられず、テーブルに強く手をついた。