藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

ひらりひらりと紅葉が踊る。

帝都管理者である国都家に向かうことにした。

巫女としてのお務めではあるが、ちょっとした憩いの時間に浮足立つ。

「瀬織! 洋装の人がたくさんいるわ!」
「ちょっと、あんまり騒がないでよ」

巫女装束は手荷物にまとめ、いつもとは違う華やかな着物をまとう。

色違いの藤模様の着物に、赤紫の袴、せっかくだからと髪型も少しだけ変えて。

「瀬織は何を着てもかわいいわ。髪も、いつもの二つ結いもかわいいけど。三つ編みもよく似合ってる。何より藤色の着物は瀬織の高貴な雰囲気を引き立てて――」

「うるさい。うざったい。少し黙って」

あまりに愛らしいと顔がとろけ、早口に語っていたが、瀬織にバシッと切られてしまう。

私のふてぶてしさはこの一か月で強さを増した。

言葉に出せないならせめてボディタッチ、瀬織の腕を掴んでベッタリと身を寄せる。

互いに譲れないものがあり、瀬織は手厳しく腕を振ってツカツカと先へ進んでしまった。

その後ろ姿に見惚れ、うっとりと両手をあわせる。

(怒っていてもかわいいわ! でもやっぱり笑顔が一番ね!)

「いやぁ、ごめんごめん。帝都は人が多くて参っちまうなぁ」

遊磨が軽い足取りでトントンと隣に並ぶ。

洋装の男性も多くいるが、遊磨はどこにいても目立つようだ。

進むほどに女性に声をかけられていた。

華やかな顔立ちに、型にはまらないつかみどころのなさ。

とはいえ、尖ったカッコつけでもなく、自由でおおらかな雰囲気だ。

女性がつい手を伸ばしてしまうのも、気持ちはわからなくなかった。

ところどころ聞こえてきたのは”火遊び”という単語。

がんじがらめな現実に夢をみたいようだ。

「ところであれ、大丈夫か?」

チラリと後ろを見れば、どんよりとした暗雲を背負う静芽がいる。

どうしたって目立ってしまう容姿を隠すため、フードをかぶって真っ黒な外套で身体を見せないよう徹底するも、それはそれで怪しいなりだった。

「静芽さん、大丈夫ですか? ムリをしなくても……」

「いい。猿みたいな虫がたかってくる。こんな場所、放っておけるか」

「あはは……」

警戒心むき出しというか、苦笑いで済ませていいのか。

こうして一緒に過ごすようになって、静芽は過保護だと知った。

他人に興味がなさそうなのに、私を指さす巫女たちをけん制する。

(こんなに大事にされたことないわ……)