「村人は帝都に避難したんでしょ? 今後のためにも、帝都側と話せたらなって」
息がはやる。
真っ当なことを言えているか、判断力はない。
でも今の私は前の私と違う。
静芽と出会ったことで、大きな一歩を踏みだせた。
今の私が弱音を吐けるのは静芽の腕の中かもしれない。
だけど勇気をだして、前を向く私を見てほしい。
うつむくばかりの私ではなく、がんばろうともがく私を好きになってほしいから。
(もう認めていっか。時間なんて関係ないもの)
「わかった」
「えっ?」
ハッと顔をあげると、瀬織が頬を赤らめている。
聞き間違いかもしれないと首を傾げれば、ご機嫌斜めの返答がきた。
「帝都に行くわよ! 着いたら宿に入る!」
瀬織の決定に、きっと私の表情は晴れやかになった。
「よっしゃあ! 帝都だ、上がるぜぇ!」
調子よく遊磨はガッツポーズをとり、飛び跳ねながら帝都方面に進む。
「明日、すぐに国都家に行くわよ。夜のうちに文を送らなきゃ」
暗くならないうちにと、早歩きで帝都に向かう。
夜でも明かりは灯ったままで、まぶしさで眠るのも一苦労だ。
幸いにも宿をとることができ、瀬織とおしゃべりして眠りたいと妄想する。
案の定ではあるが、瀬織はさっさと布団に入ってしまったので、私は一人で月見をした。
満月を目指して大きくなっていく輝きに見惚れ、やがてウトウトして眠りについた。



