川の氾濫で被害を受けた村の様子は把握し終えた。

すでに村人は帝都に避難しているが、村は水没しており復興には時間がかかりそうだ。

近辺まで探索してみたが、川を氾濫させた原因のあやかしは見つからず。

歯がゆい思いに拳を握りしめた。

「時間が中途半端ね」

瀬織の一言に空を見上げる。

一度白峰家に戻るにしては、太陽が傾き情熱的な色に染まりつつあった。

夜道を進むのは得策ではないが、村は水没しており休む場所もない。

あやかしの襲撃を食らうのはもっとも避けたいが、悩ましいもの。

チラリと瀬織の様子をうかがうも、青白い顔からは何を考えているか見えてこなかった。

(私、うじうじしてばかりね)

頼れる姉とはこういう場面で、バシッと道筋を示せる人だ。

「瀬織のために」と口ではベラベラ語るくせに、行動が伴っていない。

結局、瀬織に決断をゆだねている。

どうせ私が何を言ってもムダだと、卑屈に考えているのがわかりやすく行動にでてしまっていた。

「菊里、大丈夫か?」

静芽が私の乱れた髪を耳にかけ、顔を覗きこんでくる。

至近距離に恥ずかしくなって、赤い瞳を直視できずに顔を反らした。

「大丈夫です。どうしたらいいのかなって……それだけですから」

あいまいな態度に困ってしまうのは静芽だ。

悩んでいると表情にだす自分のあざとさは嫌気がさす。

瀬織の力になりたいと思っておきながら、自力ではなく他力にすがる情けなさにうなだれた。