「女の身に自由が少ないのはわかっています。ですが父上こそ、誤解なきよう。ここは巫女の家系。ここにいる最強巫女があやかしから人々を守っています。巫女がいて、父上がいる。私たちが求めるのは立派に弓巫女をまとめあげてくださる当主です。父上にそれが――「菊里っ!!」」

今度は瀬織から菊里に平手打ちが飛んだ。

歯ぎしりをして、鋭い眼差しで私をその場に射抜いてしまう。

動けなくなった私に瀬織は消え入りそうな声で「能無し巫女は黙って」と釘をさす。

そして乱れた髪を指で梳き、怒りに殴りかかりそうな父に土下座した。

「申し訳ございません。わたくしが能無し巫女をコントロールできずにいるせいです。討伐に同行させ、巫女の立ち位置を再認識させてまいります」

「ちっ……! それでいい。……瀬織、お前に期待するのは名声をあげること。弱い姉がても、民も含めて守る最強巫女。……戦う以外は求めておらん」

「はい。承知いたしました」

「もう行け」
 

それから父と謁見した間から出て、襖が勢いよく閉められる。

私は父への憤りを感じながらも、それを表に出すとまた瀬織を困らせると判断し、奥へ奥へと引っ込めた。

何重にも鍵をかけ、いつも通りの目標に向かって全力の姉の顔に戻った。

「瀬織。私、がんばるからね!」

「……足手まとい」

辛辣でも異常者な私にはときめきだ。
返事があるだけで充分にうれしいこと。

うつむいていたばかりの日々も、今は瀬織に近づけていると道が開けていた。

瀬織の姉であることは誇らしいが、肩を並べて惚気てみたい。

剣の練習をすればするほど、欲張りになっていた。