「お父様。やはりここはわたくしにお任せください」

「……なに?」

父が命じたのは瀬織と菊里、そして遊磨をつれてのあやかし退治だ。

多少の抵抗はするものの、今まで目立って何度も否定することはなかった。

珍しい瀬織の言動に首を傾げていると、父は眉をひそめて足裏で畳を強く踏みつける。

「沼津家の者が同行するならば、能無し巫女の実態をさらすのは白峰家の恥になるかと。役に立つところか、白峰家の弱みをみせるのは賛成いたしかねます」

「……それで。お前は白峰家が落ちぶれているとでも言いたいのか?」

「いいえ。そのようなことは決して……」

「お前は巫女なのだからただ戦っていればいい! 家長にものを言うとは、お前こそ恥知らずだ!」

――パシッ!!

足裏がドンッと畳を鳴らしたかと思えば、父の身体が前に出て勢いをつけて瀬織の頬を平手打ちする。

「瀬織っ!?」

傷つけられた姿に私は悲鳴をあげた後、すぐに瀬織の身体を支えようとする。

それを瀬織は手を突きつけて拒絶した。

「申し訳ございませんでした。わたくしはただ、得体のしれない現場に行くなら少数精鋭にしたかっただけでございます……」

「ふん。お前が歴代最強の巫女なのは認める。だがな、女は慎ましく言われたことをやれば良い。お前は巫女以前に女だ。そもそも女に学は不要。たまたま巫女の家系だっただけで、巫女として言われたことも真っ当出来ぬなら、実力はあれど不出来な女で……」

「それまでです、父上」

ベラべラ早口で瀬織を侮辱する父に、私は前に出ると極寒の瞳で見据える。

声はいつもよりオクターブ低く、抑揚もなくてやたらと周りの空気を巻き込んで冷えていくのを感じた。