「小娘が……。男性を……に……ば秩序……うと考えないのか……」

それでも若者に台頭されるのはおもしろくないらしい。

舌打ちをして、槍巫女のことを悪く呟いていた。

忌々しいと言わんばかりのしかめ面で、父は畳に爪をたてガリガリとかきむしりだす。

こういう時、父のプライドの高さと劣等感を垣間見る。

それもどうでもいいので、瀬織に視線を向けて目の保養に努めた。

父の発言は聞き流し、ぼんやりと巫女の在り方について思案する。

(遊磨さんは当主になりたいのかな? あまり他家のことはわからない)

遊磨は十九歳。
私と瀬織は十七歳と年齢はほとんど差がない。

年齢で考えれば遊磨が当主の座についても問題ないだろう。

実際、白峰家では男性の父が当主の座についている。

男のプライドで地位を欲さないのか疑問に抱くも、あの気さくな遊磨のことだ。

口ぶりからも、当主より現場派だとメラメラ燃えるはず。

楽しんで行動するのは、自分のためにも周りのためにも良い。

瀬織とは違った肩の預け方ができる人だと、考えて私にもみるみるうちに力を与えてくれた。

「私、がんばります。静芽さんもいますから」

人の影響は大きい。
私の原動力は瀬織だ。

そこに力を貸してくれるのが静芽。
遊磨は巫女として目指したい明るさだろうと、想像だけでもワクワクした。

たとえ、私の言葉に父は返事をしなくても。私も父に期待はしていない。

当主と巫女、父と娘。
表面上だけはそれらしく振る舞うだけ。

私の家族は母上と瀬織だけだから。