「瀬織は器量も良いし、巫女としても有能です。白峰家にそぐわないのは私で……」

「ふーん。それはそれでいいんじゃないの? 菊里ちゃんは菊里ちゃんジャン」

あっさりすぎる返答に拍子抜け。
これでは思い悩む私がおかしいみたいだ。

劣等感を抱いているのは私だけであり、瀬織と一緒くたにする理由がわからないのだろう。

瀬織が優秀だろうと、私が不出来だろうと、端からみればそこまで卑下すべきことではない。

これまで散々比較されてきたのも、足元をすくいたい連中が声を大にして言うだけだ。

まるでジョークを語るように彼はゲラゲラと私の悩みを笑いとばした。

「オレは沼津 遊磨だ。槍巫女として絶賛活躍中だぜぃ」

「はっ、えっ……でも男性には」

「かくりよには送れないが戦闘不能には出来る! 強さなら槍巫女イチだぜ!」

なんと大胆で意気揚々としているのか。
弓巫女は全体的にじめっとしている。

遊磨だけかもしれないが、前線に出る人がハツラツとした笑顔を浮かべ、何事もポジティブに変換するのであれば、現場も相応に明るいはず。

巫女の能力がないことを、遊磨はまったく引け目に思っていなかった。

捉え方が一歩どころか斜め上に進行する遊磨に圧倒される。

私は卑下するばかりで、常識の枠に当てはめる行動しかとらなかった。

「言ってやったぜ」と誇らしげに鼻を高くする遊磨は輝かしい。

太陽のような笑顔で遊磨は私の手を両手で挟んできた。

「瀬織ちゃんはすごい。すごいのはわかる。だ~がっ! オレは硝子のような女の子を守りたくなっちまうタチでねぇ」

「は、え……?」

「というわけで菊里ちゃん、オレと結婚してくれ!」