藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「はぁー、かわいい巫女が多いんだな。キミも弓巫女?」

「そうですけど……」

「オッケーオッケー! 眼帯弓巫女ちゃん! そっちの巫女ちゃんもお揃いか」

私と瀬織を並べて満悦顔。

「どちらもかわいいな! だが好みで言えばオレは清楚系が好きだ!」
「ひぇ……」

帝都で増えつつある軟派男。

巫女として生活をしていると、世の中の流れに疎くなるので、男性の普通がわからない。

この傾奇男が普通なのか、そうでないのか区別がつかずに頭がぎゅうぎゅうに締めつけられた。

この目の輝かせ方からして、男は眼帯をただのオシャレと認識しているようだ。

私たちは表向きに目が見えないことにしている。

表に出すのは藤色の瞳で、異なる色は眼帯で隠す。

オッドアイは不吉と言われており、弓巫女に余計な混乱を招かないための対処だった。

父はオッドアイを忌々しく思っているようだが、私にとっては違う。

(瀬織が双子だって信じられる証……)

瀬織と双子だとは誰も想像しない。それくらいに瀬織と私では月とスッポンだ。

オッドアイが共通しているからこそ、たしかに私と瀬織は双子だと認識できた。

これが私と瀬織を繋ぐ細い糸。

「なぁ、名前教えてよ!」
「わ、私は……」

男から逃げるタイミングを失い、背中に汗が伝う。

煮え切らない態度でいる私に、瀬織が挑戦的な目つきで男の腕を引いた。

「沼津家の方。当主のところへ案内します」

「わぉ、いい腕っぷし……。またあとでな、片割れの眼帯巫女ちゃん!」

瀬織に引っ張られ、男は笑顔で手を振り去っていく。

まるで嵐だ。
毅然とした態度を貫き、男を案内する瀬織の背はどこまでも凛々しかった。