軍服を着て、背中になにやら武器を背負う風変わりな男だ。

「と、突然何です⁉ ここは弓巫女の地ですよ!」

「だ~か~ら~! オレは槍巫女、沼津家の者なんだって!」

「あなた男じゃないですか! 巫女ではありません!」

「男でもあやかしと戦うことは出来る! かくりよへ送れねぇが、戦いに関してはすげぇ実力の持ち主でぃ!」

男は見せた方が話は早いと、背負っていた武器を布からあらわにする。鎖のついた槍だ。

それを器用に振り回し、誇らしげに石突で地面を叩く。

「このとおり、自由自在に使えるってわけだ」

「きゃ……きゃああああああああっ!!」

男の行動に再び巫女が悲鳴をあげたので、男は慌てて槍を背に戻す。

「え、おい、うそだろ? そんな叫ぶことあった?」

「あなた何!? 男が巫女の槍を持つとは!」

動揺する男に向かい、責任感の強い凛とした声が飛ぶ。

正門まで駆けてきた瀬織が弓を構え、切っ先を男に向けて警戒をみせる。

瀬織は絶対に弓巫女を守ると強い意志を持っていた。

能力差は関係なく、弓巫女の鏡であろうと必ず最前線に出る。

その分、ならず者には容赦なく殺気立てていた。

「違う違う! オレは本当に槍巫女の沼津家の者だって!」

よろしくない状況に、男が急ぎポケットから紙きれを取りだす。

ぐしゃぐしゃになったそれに男は苦笑いで誤魔化していると、瀬織が怪訝な顔をしてそれを受け取る。

中を確認すれば眉間に指をあてて、深いため息を吐いていた。