「ふふっ……!」

笑わずにはいられない。

静芽は笑いやがったと、目尻をつりあげて睨んでくる。

「お前、何なんだよ。怖いもの知らずか? 強じんの心臓でも持っているのか?」

「あははっ! だって静芽さん、とってもかわいいんだもの!」

嘘のつき方も下手だが、素直すぎる人だと胸がくすぐられる。

隠しきれないお人好し。

真っ直ぐすぎる感情のぶつけ方。

いつも相手のことを考えて悩んでいるからか。

気難しい顔が多いと思えば、いじらしくてたまらない。

「ありがとうございます」

唇をとがらせて、静芽は煮え切らない様子で髪をかく。

「もう平気か?」
「はい」

いろんなことを思い悩んだが、静芽の励ましで元気が出てきた。

沈んでいた気持ちが、今はポカポカして花が開くようだ。

そのままうれしさに笑っていると、静芽は恥ずかしさに耐えられなくなったようで、私の肩を突き飛ばしそっぽを向く。

腕を組んでブツブツと言い訳を口にする姿はやっぱりあいらしい。

瀬織のとなりに並びたいと必死になる私に、安らぎをくれる人だと口角がゆるんだ。

それから静芽は自分のことを少しだけ話してくれた。

寝る時は犬(仮)の姿の方が楽だとか、人に犬の姿は見られたくないから蔵にいたとか。

年相応に軽い口ぶりで話す静芽に、私は憂いを忘れる。

いろんな方面で私に力をくれる人だ。

静芽がいれば、私はまだまだがんばれる。

夢が夢じゃなくなったと、希望に背筋は伸びていた。

「すぐに助けることが出来なかった。……すまない」

話すだけ話したあと、静芽は声のトーンを落としてポツリと呟く。

ようやく一番伝えたかったことを口に出来た、と静芽は悔いる気持ちをあらわにした。

そんなやさしさに少し泣きたくなったが、私は微笑むことを選ぶ。