離れの横には空高く茂る御神木がある。

トタトタと縁側を進めば、幹に背を預け、ウトウトと目を閉じる静芽を発見した。

風がそよぐと木漏れ日が静芽の顔に光の波を打つ。

(やっぱりキレイだなぁ)

白銀の髪が一本一本きらめいて、滑らかなラインの顔から目をそらせない。

時折、赤色のメッシュが静芽の気品を引き立てる。

殿方にしては繊細な美しさの持ち主だと感嘆の息がでた。

「さっきからなんだ?」
「あ……」

長いまつ毛が上向きになり、ひときわ目立つ赤い目に魅入られる。

見つかってしまった、とおずおずと近寄り、静芽の隣に立つ。

じっと見上げられると恥ずかしくなり、やけくそになって正座をした。

背筋を伸ばして深呼吸、からの壁破りだ。

「静芽さんって犬なんですか!?」

(あぁぁ……何を言ってるのぉ……)

気合いを入れて口から飛びだしたのは、なんとも間抜けた質問だ。

もう少しクッションを置くとか、さりげない問いにするとか、色々出来たはずなのにどうして私は直球しか投げれないんだと頭を抱える。

反応を見るのがおそろしい。

そーっと静芽に目を向ければ、やはりギョッとした顔が待っていた。

困らせていると、焦って両手を振っていると、罪悪感にめまいがした。

「犬ではない」

ブスッとふてくされた顔で、静芽は眉間を摘まむ。

(犬じゃないんだ……)

怒った反応ではなかったと安堵する。

ではどんな姿だったのだろうと想像してみるが、曖昧な姿しか思い浮かばない。

目は紅玉、色は白、毛並みは少し固め。

私の身体と比較するとどれくらいの大きさで、手足にはフニフニしたくなる黒い肉球がついているだろうか?

案外、桃色の肉球かも。

いろんな姿を想像し、膨らませていく。

具体的な姿を知りたいと好奇心が湧くが、静芽のオーラがそれを寄せつけない。

マイペースに想像していた分。罪悪感が四方八方から刺さってくる。

なんとか静芽の機嫌を戻そうと、私はニコニコと静芽との距離を詰めた。