藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「こんな感じですかね?」

見よう見まねで指先で風をきり、舞ってみる。

静芽はあんなにもキレイに舞っていたのに、私が舞うとちんちくりんだ。

足がもたついてしまい不安定さが目立つ。

軸のないままにターンをすると、足が絡まりバランスを崩してしまった。

「きゃっ!? うぅ……」
「菊里は意外とドジなんだな」
「あっ……! ご、ごめんなさい!」

静芽に支えられると力強さを意識してしまい、いそいそと背中を反らして両手を前に突き出す。

恥知らずな行為だったと笑って誤魔化そうとした。

「やっぱり私には難しいですね」

立ち上がって静芽に背を向けると、濡れた髪をかきよせて火照る顔を隠す。

(男の人って全然女の人とちがうなぁ)

巫女には女性しかいない。

女性にしか、かくりよを送るための力が備わっていないからだ。

接点がある男性といえば父しかおらず、その父も私にはほぼ関心がない。

私も父を見るたびに不愉快な気持ちになるので、お互い様だ。

異性なのに、しっかりと会話が成り立ったのは静芽がはじめてだ。

この不慣れな恥じらいにはどんな名前がつくのだろう? 

大切な人ではあるが、それが親愛なのか異性愛なのか。まだハッキリと決めれずにいる。

そもそも出会ってからさほど時間が経っていない。

私が勝手に意識しているだけで、その感情が好奇心か、単なる不慣れからくるものなのか。

意識するのが早すぎるので、私は尻軽だったのかと、破廉恥な気がして両頬を二回叩いた。


「……静芽さんみたいにキレイに舞えたらな」

欲をいえば、私が舞ってそれを瀬織にキレイと言ってほしい。

少しでも瀬織に向いてもらえるなら舞いでもなんでも身につけたいと期待にうずく。

ささやきのような欲に、静芽はピクリと耳を震わせて首を傾げた。

「やってみるか?」
「えっ!?」