直球な言葉は心臓をわしづかみにされる。

熱に浮かされアタフタしてしまう私がおかしいのか、と暴れて引っ掻きたい。

それこそシャーシャー猫のように。

(穴があったら入りたい……)

「妹のことは正直わからない。だが菊里が頑張りたいと願うなら応援する」

静芽の言葉はありのままだから、心に沁みた時の喜びも大きい。

深い思いやりは、心細さに染みわたる。

強くつよく、私を支えてくれる不器用さだ。

「がんばりたいです!」

何度でも瀬織を好きだと叫ぼう。

強くなりたい。となりに並べるようになりたい。

母に託された想いを胸に突き進むために。

自分の感情が報われることより、妹の幸せを願う。

「だから静芽さん、絶対に私から離れないでください」

この想いは絶対に間違いなんかじゃない。

そう思っていても他人は否定してくる。

だから静芽だけはこの気持ちを肯定して――。

「菊里……」

紅玉が私の頬に移る。

心臓がドキドキしはじめて、これはダメだと笑顔を用意した。

「強い刀巫女、目指してますから!」

べったりと満面の笑みを貼りつけ、静芽の肩を押す。

陽気にくるりと回って空を見上げた。

「今日は新月でしたね」

あやかしの出没は月の満ち欠けに影響する。

満月のときは弱く、新月だと強くなるが、今宵はどうなるのだろう?

顔色を隠すため、わざと静芽に背を向けて大きく伸びをした。

不安定さも、いつか必ず私が剣で斬り飛ばしてみせる。

自分で自分を鼓舞しなくて誰がする?

群青に染まりきった空に、私は星を掴む勢いで不敵に笑った。