「父上が言うから仕方なくよ。お前は無能らしく引っ込んでなさい」

棘を含んだ声で私を拒絶する。

いつも瀬織は私を見ようとしない。

辛くあたって、私に役立たずの烙印を押す。

話すことはないと先へ進んでしまう瀬織に、私はハッとして追いかける。

だがギリギリのところで間に合わず、瀬織は荒々しく襖を閉めて私室に入ってしまった。

残された私は張りつけた笑顔のまま、視線だけ落とす。

何もない手のひらを見下ろし、弓を想像して握ってみたがしっくりこなかった。

皮だけ厚くなり、巫女としての役目は何一つ果たせない無能の手だ。

「強くなりたい……」

その想いだけは一途に変わらない。

(弓巫女として適正がないのはわかってる。だったらどうすればいいの?)

刀巫女、槍巫女、弓巫女。三大巫女の種別であり、私は弓巫女の筆頭家門に生まれた。

弓だけを握り、双子の妹・瀬織を追い続けた。

細い肩にのしかかる負担を少しでも分けてほしい。

孤高な目をして先頭に立っているが、隣に並んで二等分になりたかった。

誰よりもいとしい妹。

誰もが私の愛情を異常だと言う。無能だから引っ込めばいいのにと囁かれても、私は絶対に引かない。

瀬織のためならば。瀬織といたいから。私の最愛は瀬織だ。

隣に並んで恥じない姉となるにはどうしたらいいのだろう?

弓巫女の家門に生まれた以上、弓以外を握ることはできない。

無力な手を見下ろすしか出来ず、あやかしと戦う巫女たちを憧憬のまなざしで見る。

筆頭家門の者が軸となる弓を握らない。

道理に背く行為となるため、弓だけが私の武器となる。

瀬織が弓巫女として戦って、隣に並べるなら私は何を武器にしてもいい。

……それなのに枷ばかりが増えて、私はたった一歩を踏み出すことが出来ずにいた。