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夕暮れ時、かかさず続けてきた弓の特訓に代わり、剣の練習がはじまった。

「静芽さん! よろしくお願いします!」

刀巫女としての第一歩を華々しく飾ろう。

情熱を燃やしていると、静芽がジィッと私を見下ろして肩に手を置いてくる。

(あ……)

相当、身体に力が入っていたようだ。

触れられてはじめて緊張していたと知る。

恥ずかしさにへらへら笑うと、静芽が眉をひそめて小さく首を横に振った。

「すまない」

なぜ静芽が謝るのだろう?

理解できずに首を傾げると、静芽は不自然に口元を隠して赤い目でチラチラ視線を投げてきた。

「どうすればお前が笑ってくれるかわからない」

一瞬、何を言われたのか理解できずにポカンと口を開く。

だんだんと理解に至り、静芽のきまりが悪そうな姿に笑い声が漏れた。

「あはっ……はは! 静芽さん、おかしい……!」
「笑うことか?」
「ううん、ごめんなさい。あははっ……!」

静芽なりの気づかいは不慣れであいらしい。

ムッとして口を一文字に結ぶのも、不器用さが垣間見えてつい笑ってしまった。

(私より静芽さんが固くなっているわ)

強張らなくていいと言う割に静芽の表情は堅苦しい。

元々表情を作るのが苦手なのだろう。
静芽の歩み寄り方に目頭が熱くなった。

目元ににじんだ涙を指で拭っていると、眼前に影ができる。

顔をあげると、距離感の壊れた静芽の顔があった。

「どうすればいつもそうやって笑う?」