(そんな人がどうして剣を……)

あれは刀巫女が持つための剣だ。

巫女それぞれに特別な武器があり、その入手方法は当主になったものにしか知らされない。

弓巫女にいたっては途中で口伝が途切れたようで、現当主である父はそれを知らなかった。

当然、私はそのことに腹を立てている。

(“瀬織が”困るの! 口伝が途切れるなんて、前代未聞なこと……)

そう思いはしても、無能の私が口に出せることでもなかった。

「あんたは刀巫女だ。この剣がそう言ってるんだ」

静芽の手が私から離れると、宝玉のついた剣に移動する。

戸惑い混じりの触れ方に、つい私まで手を伸ばしたくなった。

ダメだ、と私は静芽に背を向け、唇を噛みしめる。

「あんたが刀巫女の理由。俺にはわからない。だがこの鞘から抜いた事実がある」

「わ、私は弓巫女です! 白峰家の娘で、瀬織の双子の姉で……!」

「瀬織……。あぁ」

あの娘か、と静芽が呟いたので急ぎ振り返って静芽の腕を掴む。

「瀬織を知ってるの!? 瀬織は私の妹で……!」

「白岩山にいた娘だろう? 弓をもっていた眼帯の」

じっと静芽が私の顔を見つめる。

「あんたと同じ、オッドアイの巫女だ」

そこでようやく、眼帯を外していたと気づく。

忘れていたと焦り、右目を手で覆い隠す。

信じがたい現実に必死で、自分を顧みる余裕がなかった。