「菊里(きくり)さま。ご指示をいただけますか?」

「あっ……はい。まずは――」

あやかし退治の後始末は私に出来るまともな役目だ。

指示をあおぎにきた巫女にテキパキと対応を教えていると、後ろからひそひそとした声が聞こえてくる。

「本当に瀬織さまはステキね。対して菊里さまは……」

「本当に双子なのかしら? 出来があまりに違うのではなくて?」

――そのような言葉はもう慣れたもの。

私と瀬織は双子の姉妹。

瀬織は歴代巫女の中でも圧倒的に優秀だ。

対して私はあやかしを倒す力をもたない無能巫女。

私たちは“あやかしを退治する巫女家系”に生まれ、弓を武器に戦っていた。

巫女の筆頭家門は三つ。
そのうちの”弓巫女”にあたる私たちは生まれながらに明暗が分かれていた。

弓巫女筆頭家門の娘でありながら、私は巫女としての能力がなく、笑いものでしかなかった。

(強くなりたい

瀬織と肩を並べられるくらいに。

欲をいえば瀬織を守れるくらい強く、たくましく……。


私の願いは昔からずっと同じだ。

双子の妹・瀬織を守ること。
お姉ちゃんなのだから、妹を守るんだと母に意気込んでいたことも懐かしい。

右目を覆う眼帯を指でなぞってみる。

私と瀬織は両目の色が異なる”オッドアイ”を持っていた。

それくらいしか私たちを双子たらしめる繋がりがない。

オッドアイであることを隠すために私は右目、瀬織は左目に眼帯をつけていた。

表に出るのは藤色の瞳だけ。
隠れた色はお互いに見せあったことのない秘密の色。