藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

きっと壊れてしまう。

そばにいたまま強くなれるなら、私は瀬織に嫌われたとしても何にでもなる。

いまさら嫌われることに恐れはない。

肩を並べることが、強いお姉ちゃんであることが、私のすべてだから。

そうして自分の気持ちを一つひとつ確認してみれば、弓巫女でなくても瀬織を守れる可能性を知る。

問題はそばにいれなくなること……。

本当に怖いのはなに……?

(私は弓巫女にこだわってない。それよりも……)


「あれ……?」

目の前がぐらついて、見え方の異なる二つの視界が閉じていく。

身体に力が入らず、気怠さに襲われて立っていられなくなった。

「つよく……なりたい」

それだけが不変の想い。

弓巫女として戦わなくてはならない。

それは父や祖母に言い聞かされ守ってだけであり、私自身は強くなれればなんでもよかった。

ただ禁じられた。瀬織に不快な思いをさせたくなかっただけ。

弓を握り続けたが、剣を知った今、道は一つでないと知ってしまった。

私に弓巫女でなくてはならないという矜持はない。

瀬織のお姉ちゃんになれれば、私はプライドなんて捨てる――そこまで考えて私は青年の腕の中で意識を失った。

***

幼い私が父に呼ばれ、広い畳の部屋で正座をしていた。

たしか父とまともに対面するのははじめてで、緊張に身を強張らせている。

正直に語ればこのころから父への殺気を抱いていた。

ふすまが開き、さらさらの琥珀髪が揺れるのに目を奪われる。

この子はずっと会いたかった双子の妹だと気づき、視界は星がまたたくようにキラキラ光りだした。

ようやく話をする機会が出来たと、うれしくなって手を伸ばす。

だけどその手は……。