藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

後ろ髪を引かれる想いに蓋をして、私は巫女らしい仮面を顔にはりつける。

「巫女の務めが果たせました。あなたのおかげで私は戦えました」

「剣は不要か?」

その問いに、私は凝り固まった微笑みを浮かべるしか出来ない。

青年は短くため息をつき、剣を受け取ると鞘から抜くしぐさをした。

(なんで?)

青年が剣を抜こうとしても、刃は鞘から出てこなかった。

再び私が剣を持ち、鞘を引いてみればあっさりと銀色に輝く刀身が現れる。

「お前は刀巫女なのだろう。この剣は適正のある者にしか抜けん」

「待って、私は弓巫女で……」

「だからわからない。お前は誰なんだと……」

整理のつかない状況に青年は滅入った様子で額をおさえる。

私の藤の瞳を見つめ、また悩ましげにため息をついていた。

「少なくともお前は刀巫女なんだろう。その証明はされた」

「そんな……。私、弓巫女で、瀬織のお姉ちゃんなのに」

瀬織と双子なのだから、このように適性が分かれるはずがない。

筆頭家門から他の巫女が生まれないはず。

私が刀巫女、瀬織が弓巫女であることは矛盾でしかなかった。

「適性が刀巫女である以上、そのまま弓を握っても強さは得られない。前線から去らねばすぐに命を落とす」

「……わかってます。そんなことは」

悔しさに歯を食いしばる。

泣くに泣けない想いは、青年に八つ当たりとなってぶつかっていく。

「その剣をとったら私は瀬織のそばにいられない! ずっと弓巫女として戦ってきた!」

禁じられている剣を手にとれば、より居場所はなくなってしまう。

弓巫女の筆頭家門が他の武器を手に取ることは、前代未聞。

家に背く行為だ。

一番怖いのは瀬織のそばにいられないこと。

瀬織のそばにいたいから強くなりたい。
愛を越えた愛情があるから守りたいんだ。

(そばにいたい……。そばにいれなかったら私……)