藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

いつもは震える指先も、今はまったくぶれない。

まっすぐに矢があやかしに向かい、翼に刺さって黒い血が吹き出た。

――それだけだった。

肩で呼吸をし、無力さに爪を手のひらにたてる。あやかしを祓う力はない。

どれだけ強い気持ちで挑んでも、土俵にさえ立たせてもらえない。

この悔しさに何度涙したか。

強くなりたい。強くなりたい! 強くなりたい!!

渇望して、叫んで、現実に打ちのめされる。

瀬織が遠い。

大切な妹なのに、どうして私はこうも役立たずなの?


青年が器用に風をまとい、あやかしと戦う姿に憧れを抱く。

あやかしを倒すとかくりよの道を開くのは、同じようで別物だ。

青年はあやかしを戦闘不能にさせようとしているのだろうが、相手は小賢しく、キリのない状態だ。

青年は舌打ちし、地面を蹴り飛ばして後ろに大きく下がった。

「お前、この剣をもってみろ」

青年が腰にさげていた剣を私の手にのせる。

「えっ!? わっ!?」

ズシッとした重みに、慌てて弓を腕にかける。

弓よりずっと重いそれを渡されたところで扱い方がわからない。

その割に気持ちが逸り、刀身を見てみたいと鞘に手をかけた。

銀色の刀身が現れ、輝きが私の左目を刺激する。

「キレイ……きゃっ!?」

剣の美しさに目を奪われていると、青年が私の腕を掴み、木々を越えて高く飛び上がる。

山の上空で止まると、腕から弓が落ちて剣だけが残された。

「あっ……」
「その剣を振れ。俺がサポートする」
「えっ! 待って……。私、剣なんて振れ……!」

私の返事を聞くより先に、青年はあやかしに向かって急降下する。

悲鳴をあげるも、もはや戸惑っている時間はない。

唾を飲みこみ、どうにでもなれとやけくそに剣を振り下ろした。

青年の支えもあり、切っ先に風をまとってスムーズにあやかしに斬りかかる。

あやかしの身体を袈裟懸けに斬れた。

血が飛び散り、青年のうるわしい頬を汚してしまう。

今までない手ごたえにあっと驚き、脈が速くなるのを感じた。