藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「ふふふっ。あなたたちは本当におもしろいですねぇ」

さらさらと流水音がし、私たちの周りを泳ぐ水龍。

「声が届かないってことは、聞く耳がないってこと~。みんなが何を言ってもあの人は救われない。……今も悲しんで見ているのに、あの人は怒ってるだけ」

水龍に続いて風がそよぎ、私たちの頬を撫でながら風龍がのんびりと語る。
その言葉にすべて集約されている気がした。

ここはかくりよの最下層。
目を開けてはダメな場所。

最後の審判は相良と鈴里、そして叔母の三人が行うのだろう。

父・道頼を憐れみ、友人として家族として悲しみを抱いていた。

たしかな情がそこにあったはずなのに、何も届かない。
とっくに父の心は閉ざされており、独りで生きている状態になっていた。

(とてもとても、悲しい。ダイキライだけど、嫌いになりたくなかった人)

最下層にきて最初に聞いたドォーンと響く音がした。

太鼓をたたく音に似ている。
だんだんと音が大きくなり、音の間隔も狭まっていく。

「やめろ、やめろっ! そんな場所は……!」

何が起きているかは見えない。

今、審判が下ったと吹き上げる熱気をうけて知る。

熱気と冷気が交互に肌を刺し、その場にいるわけじゃないのに責め苦を受けているみたいだ。

これが父に下された審判。
弓巫女の終わりと再生だった。