藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

はじまりの想いが私の中になだれ込んできて、涙があふれ出す。

私が瀬織を守りたいと願ったように、誰かのやさしい思いが巫女を生みだした。

願いは、祈りは、途切れることなく未来へ繋ぐ。

巫女は力でなく、想いだ――。

「血を繋ぐ。想いを繋ぐ。筆頭家門の意義ははじまりを示すんだよ」

風龍のビードロのような声が私の身に染みわたる。

力に驕ることなかれ。
欲に溺れることなかれ。

筆頭家門の血筋が継承するのは約束が繋がっていることを可視化するため。

口伝とは思いの継承だと体感し、私はやさしい風のなかで安らいだ微笑みを浮かべた。

「さて、次は瀬織さん。あなたの番やねぇ」

姉に続き、裁きをくだすことを見届けるよう、水龍は笑顔で威圧した。

それに負けじと瀬織は肩を張り、立ち上がって何の変哲もない弓を水龍に手渡した。

「水弓を求めます。たとえ力が借り物だとしても、弓巫女の家門に生まれたからにはお役目は変わりません。そして菊里を守る。もう二度と、失わない」

瀬織の強い眼差しに、私は別方向から想いに貫かれる。

(あーん、もう! やっぱり私、瀬織が大好き!!)

心配することさえおこがましいほどに、瀬織は私の誇りだ。

水弓を手にしていなくても、戦いを通じて巫女のあるべき姿を身につけていた。

(無知だったのは私だけ……だったけど! もう変わったんだ!)

たくさん恥じることはある。

だけど嘆くよりも、明日の笑顔がよっぽど大事だ。

今日という日も明日に繋ぐために、”責任感が強すぎる最高の妹”と肩を並べたいという気持ちが湧き、ワクワクが止まらなかった。

「オッドアイ。それぞれ良いところを継いだんですね」

弓を受け取った水龍は、おもむろに瀬織の眼帯に触れ、私の目に視線を移す。

「? 良いところ?」
「藤色は破魔の色、金は生命の色。母たちの強いところを分けあったようですね」

瀬織は母の顔によく似ている。

母は穏やかな顔立ちをしていたが、瀬織は気難しい表情をすることが多いので、印象はまったく違う。

それでも根っこの強さは瀬織に引き継がれていると、やさしい気持ちに胸が膨らんだ。