藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「あいわかった。罪人を裁くことで手を打ちましょうかねぇ」

「! 水龍さま!」

「仕方ないなぁ。水龍がいいならいいよ! でも先にアタシは菊里と契約する!」

風龍の言葉に心臓がドキッと跳ねる。

全身がドクンドクンと音をたて、緊張から頭が縄で縛られたように痛くなった。

頬に熱が充満していくのを感じながら、風龍が差しだしてきた手を取り立ち上がる。

「剣、こっちに」

風龍が両手で剣を要求してきたので、急に重たくならないようゆっくりとおろす。

小さな手が鞘を握りしめ、満足そうに笑むと風を巻き起こし、白銀の髪を空になびかせた。

アッと息を呑む神々しさが目の前に迫る。

翡翠色のウロコをもつ龍が剣をくわえ、私の前に顔を近づける。

細長いひげが私の頬をなで、輝く瞳で私の内側を見透かした。

全部、バレている。
隠し事なんて出来ない。
心を丸ごとのぞき込まれている気分だ。

風龍が私の内側を駆け巡り、血が騒ぎだして思い出す。

現世に歪みが生まれ、かくりよからあやかしが流出した。

人々にあやかしを倒す術はなかった。
簡単ではないあやかし討伐に。巫女と龍は契約する。

守りたいと願った原点を忘れることなかれ。
武器を暴力に使うことなかれ。

口伝じたいに中身はない。

これは龍と約束を交わしたことを思い出すための時間。

書物に記すのではなく、己の目と耳で、行動で繋いでいく大切さを知るためのものだった。