藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

(どうすればいい? 私はなんて答えれば……)

そう思い悩んだ時、私の手に瀬織の手が重なった。

目が合うと、瀬織は疲れは残れどいつもの虚勢をはった顔して口角をあげていた。

言葉はないのに、瀬織が笑っているなら何も怖くないと、私は瀬織に想いを託し、うなずいた。

「お願いがあります。水龍さま、風龍さま」

瀬織のひと際ずっしりとした声が二人の龍に向けられる。

「父を……現当主の罪を裁く方法を教えてください。あたしが知らないだけで、おそらくもっと罪を犯しているのでしょう」

「あなた、仮にも自分の父親でしょう? 父への情はないのかしらぁ」

水龍の問いに瀬織は迷いなく首を横に振った。
藤色の瞳がまっすぐに水龍をとらえる。

「父だからです。罪を抱えたままの姿は見ていられない……」

(あぁ……瀬織はやさしいなぁ)

ろくでなしの父でも、憂いる心を持っている。

私なら容赦なくどうでもいいと切り捨てるのに、瀬織は最後まで憐れみを向けているんだ。

このまま瀬織が話を進めてもいいのかもしれない。だが私は遮ることを決める。

「私からもお願いします。罪を……ううん。静芽さんのお父さんをはじめとする、悲しい想いをした人たちに謝ってほしいから!」

瀬織が罪悪感を背負うなら、私もいっしょに。
辛い思いは半分ずつ抱えよう。

苦しい思いをした静芽に、親を亡くした悲しい想いを引きずってほしくない。

悲しみの連鎖なんてご免だ。弓巫女として生きてきた私たちがけじめをつける。

それが約束を破った私たちにできる最善だ。

意志を前面に、二人の龍を見つめる。

二人はポカンと口を開いていたが、やがて腹を抱えて笑いだす。

なぜ急に陽気な笑い方をするのかと、私と瀬織は怪訝に首を傾げた。