藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「申し訳ございませんでした……。弓巫女の力が至らなかったための問題です。あたしは本来、巫女になれなかった身……」

「そうねぇ。あなたのお父上はちょっとぉ、やりすぎているわぁ。長年の劣等感とはいえ、殺しすぎぃ。口伝云々ではなく、人として終わっているわねぇ」

やはり弓巫女が途絶えたのは父・頼道の行動が起因している。

私は父の劣等感を知らないし、知ろうとも思わない。

(私も劣等感は抱えてきた。だけど誰かを傷つけてまで力を得ようとは思わなかった)

同情はする。
だが余地はない。
くだらない劣等感で誰かを傷つけるのはただの暴力。

大罪人とみなすのが人の世の理であり、私たちが許してはいけないこと。

私はこれからたくさんのことを背負う瀬織の味方になる。
揺るがない決意を示そう。

「風龍さま。私を刀巫女として認めてください。今後、口伝が途切れることのないよう、約束の大切さも伝えてまいります」

龍を見据え、私の想いを告げる。

「水龍さま。あたしは筆頭家門の者として、弓巫女の立て直しをします。口伝が途切れることのないよう……。姉と協力体制を作り、三家門の連携強化に努めます」

瀬織が私に続いて、どうして生きたいかの意思表示をする。

それに水龍は目を細め、ひたひたと濡れた足で瀬織の前に立つ。

「それで。あの大罪人はどうするつもりぃ? あの男が当主でいる限り、水弓は渡せないのよねぇ。あなたがいくら頑張っても、罪が残る限り弓巫女はそのまま~だったり」

「そのままそのまま~!!」

水龍の嫌味に乗っかり、風龍は両手を伸ばしてキャッキャと笑う。

龍たちからすると、約束を守ってくれれば怒る理由もないのだろう。

私と瀬織がやり直したいと意志をもち、ここまでたどり着いたことを無下にする気はない。

問題は大罪人が、現状の弓巫女を汚しているということだ。

父がいる限り、瀬織は水弓を得られないし、当主にもなれない。

退任するよう申告したところで、父の罪が裁かれたとはならず……。

結局、父がどうにかなるまで解決策はない。

だとしてもそれを待てるほど、今のあやかし退治の情勢は芳しくなかった。