藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「風龍さま。天野鈴里がした非礼をお詫び申し上げます。私はずっと自分を弓巫女だと思って育ちました。まだまだ刀巫女としての自覚が足りない。……ですが、人々を守る使命感は変わらずに持っています。妹の瀬織と協力して、あやかしと戦う。この重たいばかりの剣で戦おうと思います。どうか……お許しください。私に戦うことを許してください」

花畑で膝をつき、風龍に頭を垂れる。

すると瀬織もそれに続き、両手を八の字にして風龍に誠心誠意向き合った。

「あたしからもお願いします。あたしは弓巫女。父は大罪人です。許されないことをした。だからこそ償いをしたい。水龍さまにお会いしたいのです」

私と瀬織の訴えに風龍は何も言わなかった。

手足をジタバタさせると、背を向けて空間の奥へ走りだす。

どこが水源かもわからない丸い泉の前に立つと、その場に這いつくばって水面を手のひらで叩いた。

謎の行動に目を見張っていると、風が吹き、水が渦をあげて人の形を作る。

「風龍ちゃんはいつまで経っても愛らしいことね」

水が弾けて、風にのって雨のように私たちを頭から濡らす。

「すい……りゅうさま?」

名乗られたわけでもないのに、その人が水龍だと理解した。

にっこりと微笑まれ、海色の瞳に光を灯す。

「こんにちは。この間はメアがお世話になったようで、ごめんなさいね」
「あ……」

「でも弓巫女も悪いと自覚してくださいね? 現世を構成する水のバランスが崩れ、あやかしたちが歪から出やすくなった。あやかしは悪いことが大好き。自分たちの落ち度だから、文句は言えないですよ?」

どうやら水龍はメアの暴走を把握していたようだ。

メアの攻撃は水。
蛇のように水を伸ばし、弾丸の雨を降らせた。

水を司る龍の管轄下、もしくは同列の存在かもしれない。
異国の扱いは私たち巫女には関わりのない話だ。