藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「えっと……」

「あのね、菊里! 聞いて! 鈴里がひどいんだよ! アタシに剣を返してくれなかったの! 静芽に渡しちゃったんだよ!」

ずいぶんと早口で、幼い身振り手振りだ。

反応に追いつけなくても、少女は弾丸のように口をとめようとしなかった。

「鈴里の魂が剣を返さないと拒絶したの! 追いかけたけどすぐに逃げちゃうの! アタシだってちゃんと巫女に継承させないといけないのにひどいよ!」

ぷんすか、ぷんすか。
腹を立てる姿は、まるで威厳がない。

ただの幼子にしか見えない風龍疑惑に私は口角を引きつらせる。

押されるだけの状況。
風龍は気にも止めず、言葉がただの音として流れるばかり。

「アタシ、ちゃんと剣が選んだ巫女に渡すもん! 菊里だってわかったらちゃんとするもん! なのに鈴里は静芽に渡して二度と帰ってこなかった!」

「えっ……と、鈴里さんはとっくに亡くなってて……」

「知ってるよ! だから剣を返してほしかった! 武器の継承で龍と巫女の約束事を確認しなきゃいけないのに、鈴里はそれを破った!」

約束事、とは口伝のことだろうか?

そもそも口伝でなくてはならない理由は何か。

書物に残せば継承問題にならないのに、わざわざ人知れない狭間で龍と向き合うのにはとても大切な役割があるということ。

「私、刀巫女と継承します。でも口伝がない……。鈴里さまからいただいていないので、風龍さまに会いに来ました。なぜ、口伝が必要なのですか?」

「もぉーっ! 菊里はバカ! 鈴里より頭悪い!」

鈴里さまはバカだったのか、と考えるより先に風龍が私の腕を連続して叩いてくる。

行動が幼い子そのままで、頭の悪さは風龍も同じではないかと悪態をつけば、なお叩く手に力が入り、埒が明かなかった。

やがて八つ当たりに飽いた風龍は腕組みをし、大きく足を開いて仁王立ちをする。

「言い伝えってどこまで勝手に伝わると思う?」
「えっ……」