藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

今、この剣は私のだ。
胸をはって刀巫女として生きていく。

怯えてばかりだった私は静芽に支えられ、いつのまにか誇らしさに前を見ていた。

やがて光は自分の身長よりも大きくなる。

開けた地に続く穴を抜け、まぶしい日差しに目を細めた。

白い明るさに馴染んでいき、甘く爽やかな香りが鼻をくすぐる。

色鮮やかな景色が視界に飛び込んできたと同時に、となりに立つ瀬織の微笑みに胸を打たれた。

「キレイね……」

色とりどりの花が咲き、小鳥のさえずりが響く。

美しい景色の中には、現実と繋がる岩山が見受けられた。

あやかしとの戦いで足を滑らせた崖。
静芽は落ちる私を助けてくれた。

後ろを見れば岩に囲まれた地とわかる。
静芽は滝を越えて私を助けたのだろう。
(滝の水源はどこだろう? ここからだと滝の存在が感じられない)

現実で見える光景と、ここで見るものは違うのだろう。
ゆえに狭間、特別な地だと納得した。

同時に谷風が発生することから、”刀巫女のための地”だと思い知った。

(たぶん、鈴里さんはここに来ていた。静芽さんは入れなかったんだ)

鈴里の痕跡を追ってここまできた。

責任感や使命感ではなく、瀬織の望みを叶えたい一心でたどりついた。

下心でいっぱいだろうが気持ちを強くしていたのに、いざたどりつけば涙がハラハラと落ちていた。

何をすればいいか知っていたわけでない。

だが本能が私を動かした。
剣を鞘から抜くと、ゴォッと、刀身に風が巻きつきだす。

四方八方から風がでたらめに吹き、剣に吸収されていく。

花びらが舞いあがり、銀色の刀身が金に染まった。

異次元の輝きに目を見開いていると、風がシュルシュルと音をたてて収縮する。

最後に風が白い渦となり、パンと弾けて白銀の髪をした少女が現れた。

「菊里だ! 鈴里の子!」

少女がぐっと私に顔を近づける。
翡翠色の瞳に私を映し、舌足らずな声に名前を呼ばれ身が強張った。