翌日、疲れきっていた影響か、目が覚めたのは昼近くだった。

国都家のことが気がかりではあったが、私たちは先に自分たちの始末をつけようと帝都を去ることにした。

「あのっ……ありがとうございました! また写真を撮っていただけたらうれしいです」

亜照奈はおぼろげではあるが、私たちと過ごした時間を覚えているらしい。

メアの行動は、亜照奈の気持ちを反映させたものだと判明したが、そう考えると憎みきれない情がうまれた。

また会おう、と約束をして手を振り、帝都を出た。


「静芽。昨日言った通り、あたしたちは水龍さまに会いに行くわ」

「あぁ。白岩山……だったな」

静芽が気負った様子で息を吐き、チラリと遊磨に目を向ける。

「遊磨、お前の姉はどこで口伝を得た? 槍巫女の当主、武器が継承されているはずだ」

「あ~、姉貴ね。先代当主……まぁ、オレの母親なんだけどヨ。亡くなってすぐに姉貴は当主になった。武器もちゃっかり手にしてたな」

やはり口伝とは当主から次期当主に行われるもののようだ。

そこに龍神が介入していると思われるが、特定の場所があるはず。

「たぶん、武器といっしょに口伝を受け取ったんじゃねーか?」

「それはどこで? 姉に聞くことは――」

「あー、ムリムリ。オレも興味本位で聞いたことあっけど、言えねぇってた」

龍神と繋がれる狭間の地。
当主にしか伝わらない場所。

具体的なことを知っているのは槍巫女当主だけだが、何がなんでも口を閉ざすだろう。


しかし行動範囲とこれまで得た情報を組み合わせればある程度の想定はつく。

私たちは白岩山に向かい、風龍との繋がりを得る。

なんとかして水龍にもつなげてもらえれば、今後の成すべきことが決まるだろう。

そう考えていると、瀬織が一人気難しい顔をしているのに気づく。

「どうしたの、瀬織」
「あ……うん。気になることがあって」

瞬間、私の中で勝利の鐘が鳴る。

今こそお姉ちゃんの出番だと胸をふくらませ、ど~んと瀬織の前に出た。