「ほ、本当に亜照奈さんなんですか……?」

「ふんっ! あなた、本当に気配ににぶいのね! そのあたりの力は妹に全部持っていかれたのかしら!」

その言葉にハッとして、手のひらを見下ろす。

私が瀬織に力を分けた。
つまり私の中にあった力が減っているということで、アンバランスに瀬織の比重が大きい可能性もある。

それならば瀬織が自分を守る力も大きいということだ、と私は喜ばしい事実に月を仰ぎ、瀬織という祝福を崇めた。

「バカじゃないの」

瀬織から辛辣な一言が飛んできたが、都合よくそれは聞き流した。

「二人が同一人物だとして、ならば国都 亜照奈ははじめからいなかったということ?」

「いんや、亜照奈ちゃんはいる。メアに身体をとられてるだけでぃ」

となれば、メアが憑依していると考えるのがベターだろう。

そういえばメアが自分のことを”私と瀬織の関係性に似ている”と口にしていた。

私と瀬織は二人で力を分け合った縁で結びついている。

もし、亜照奈とメアが類似した関係ならば、それは何故?

「アタシ、“亜照奈”って名前がキライなの。アタシから力を持っていった英雄気取り」

意味がわからなかったが、瀬織はすぐに把握したようだ。

じーっと見つめれば、やれやれと面倒くさそうに「異国の女神と同じ名前」と教えてくれた。

あやかしと同義の存在は異国にもいる。
それが外から紛れ込んできたということを示していた。