藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「それはなぜ? 白岩山は霊山で、清らかな場所だけれど」

「さぁ……。俺はそこで鈴里さんから剣を受け取った。天野家に見つからないで、と」

剣が天野家にわたることを危惧した。

私に継承させたいと望み、剣を静芽に預けた。口伝が途切れるとは、継承すべき武器も渡らないということ。

「私が天野家の当主ってこと……?」

何の冗談だ、と思ったがそうと考えるしかない。
瀬織も同じことを思ったようで、呆然としながら口元に指を滑らせた。

「刀巫女は口伝が途切れているけど、大罪は犯していない。当主がいるなら、風龍に会うことができる。風龍に会えば口伝も繋げるってこと……!」

点と点が繋がった気がした。
瀬織は目を輝かせ、自信満々にテーブルに手をつく。

「静芽、風龍さまに会う方法は? 鈴里さまは何か言ってなかった?」

「いや、そこまでは聞いていない」

重要なポイントは静芽に知らされておらず、道を断たれた状態。

瀬織は頭を悩ませ、静芽は罪悪感に「すまん」と謝罪して手のひらに爪を刺した。

私は小指にはまった珊瑚の指輪をなぞり、亡くなった静芽の父を想う。

この指輪は、弓巫女の戒めのように感じた。


「おーい! ちょっと手ぇ貸してくれねぇか~?」

バラの庭園、門に続く道から声が届く。

目を向けると、遊磨が肩にメアを担いでこちらに歩いてきた。

「ちょっと。あんまり乱暴にしないでくださる?」

ギャーギャーと騒ぐメアに疲れたのか、遊磨は静芽を手招きして役割を交代してもらう。

やれやれと静芽は遊磨のもとに向かい、メアを拘束する鎖を受け取った。

「遊磨さん、メアさんを捕まえにいってたんですか?」

その問いに遊磨は思い悩み、後頭部を掻く。

「あ~、まぁそうだな。なんかコイツ、匂いが気になってよ」
「匂い?」

そう言われてもここはバラの匂いしかしない。

「メアと亜照奈ちゃんの匂いが一緒だ。だからもしかして、って思ったわけよ」
「それって……!」

まさか、と答えを口にするより早く、遊磨が自信満々に口を開いた。

「メアの正体は亜照奈ちゃん!」

(ええええええーっ!?)

瀬織と静芽は気づいていたのだろうか?

二人を見れば、どちらも仏頂面でうなずく。
気づいていなかったのは私だけのようだ。