藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「静芽さん。この剣は刀巫女のもの。私が鞘を抜けたのは、継承権をもっているからですか?」

その問いに静芽が目を丸くし、すぐに表情を険しくする。

よほど言いにくいことのようだ。
瀬織も静芽も、眉間にシワばかり寄せて……。

よく見れば表情のクセがそっくりだ。

母はおだやかな微笑み方をする人だったのに、どうしてこうも仏頂面が多いのか。

雑念ばかりが頭を支配するので、今は好奇心をおさえ、理性に生きるべきだと荒ぶる愛を封印した。

「私って、刀巫女として口伝を受けることは出来ますか?」

言いにくいとしても、私は知りたい。
知らなきゃいけない。

疑問を疑問のまま抱えていられないと、未来のために大きな一歩を踏みだす。

「風龍に会うときに、水龍にも会える可能性はある」

静芽が長い息を吐いて、こめかみに手をあてて言葉に変えた。

「ハッキリとは言えない。推測だ。そして賭けでもある」

静芽は考えをまとめてから口にする気質だ。

言わなかったのは明確な答えになっていないから。

それでも私には希望の言葉に思えた。

瀬織にとっても同じようで、息をのんだあと大胆不敵な笑みを浮かべる。

「それよ。菊里に正当性があるなら風龍さまに会えるわ。ちゃんと継承が出来るはず」

くるりと瀬織は静芽に身体を向け、ニンマリとほくそ笑む。

「静芽が剣を持っていたのよね。どうしてかしら?」

意地悪い顔をして静芽を挑発しだす。
結構短気な静芽はカッとムキになり、拳を震わせるが深呼吸をして耐え抜く。

兄と妹、はじめてのケンカの種かもしれない……。

「母……鈴里さんはあえて口伝を途切れさせた、と思う。菊里に繋ぐために」

「私に……?」

「口伝の内容は知らん。だが鈴里さんはよく白岩山に俺を連れていった」

白岩山は私と静芽が出会った場所だ。
静芽は滝の裏、洞穴を好んで過ごしていた。