藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「途中からだが、話しは聞いていた。お前たちの関係性はわかった」

聴力に優れた静芽は、ある程度の会話を聞き取っていたようだ。

天狗の血を引いているからなのか、静芽だから優れているのか。

美しさもあり、怖いものなしだ。

「あんたが力を返す気がないのはわかった。だとしても当主になって衰退を阻止できるのか? 口伝が途絶えたのは水龍がそうしたからだろう?」

「それがわからないから困っているの。どうやって水龍さまにお会いできるのか」

歯がゆさに瀬織はテーブルに爪をたてる。

そして立ち上がると、ズンズンと大股に前に出て静芽を睨みつけた。

静芽に対して遠慮はなくなったようだ。

「まず、水龍に会って何を話す? ことによっては更なる怒りをかうぞ」

「……あたしが当主になる。どうすれば認めてくれるか……。父のこと、どうすればいいのか。水龍さまに謝罪して、適切な対応をしたい」

「水龍に許しを請うなら、現当主に制裁を食らってもらうのが最低限だろう」

「簡単に言わないでよ。水弓が継承されることで当主交代が実現する。今のあたしにその資格はない」

だから悩んでいるのだと、瀬織は拳を握って爪をたてる。

当主の証として各家門に武器が継承され、今日まで巫女の統括を行なってきた。

血が途絶える未来しかない今、水龍が持っているであろう水弓を手に入れたい。

瀬織が当主として認められれば、水弓を継承して弓巫女を立て直せるかもしれない。

そこまで考えて、私は一つのほころびに気づく。

(私の剣って、刀巫女のもの……。刀巫女も口伝が途切れたと聞いているけれど、それはなぜ? 鈴里さまがそんな失態を犯すとは思えない。いずれにせよ、ちゃんと継承されていないのに、どうして静芽さんが持っていたの? なぜ私が扱えるの?)

わからない。
ならば答えを持っていそうな静芽に問うしかない。

私は瀬織との未来も、静芽との未来も、どっちも手放したくないから。