藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「鏡は二つ。同日に生まれたあたしたちを合わせ鏡にしたの。その不思議な鏡は、本来映すべき人を映さなかった。……あたしの鏡には菊里が映ってたんだって」

合わせ鏡。

気を乱すため、あやかしと戦う巫女は避けがちだ。

長時間、合わせ鏡の空間にいると、精神面に大きく影響をおよぼしてしまう。

鏡には使用するとき以外、布をかける。

母たちがあえて合わせ鏡をしたとすれば、何かしらの力が働いたということ。

「普通は何も変わらない。だけど私たちの間で行われたことは特別だった」

「それが……瀬織に力を与えたってこと?」

その問いに瀬織は苦々しくうなずいた。

「同日に産まれた巫女。あなたはとても強い力を持って産まれた。赤ん坊はまだ気が安定していない。それを利用して、合わせ鏡で力を分け合った。……あたしの能力は、元はあなたのものよ」

わざと気を乱して能力を移したということだ。

そんなことを可能にするほど、鏡は特別なもので、母たちの力も強かったことを示す。

かつて弓巫女として名をはせた母と、刀巫女の当主で実力を兼ね備えた鈴里。

二人の母だから成し得た荒業だ。

「あたしは死んだようなものだった。生命力にあふれていた菊里がいなければ生きられなかった」

皮肉に笑う瀬織に、私は感極まって立ち上がると、強く手を引き寄せた。

「私、瀬織を守れたってこと? 何も出来ない私でも、瀬織を助けられたって思っていいの? 瀬織を生かすためなら、私はお母さまたちがしたことを――」

「わかってる! そんなのわかってる。あんたがバカなこと、あたしが一番知ってる」

今まで瀬織を守れるお姉ちゃんになると目標を抱いてきた。

苦しいこともあったけど、絶対にゆるがなかった私の指針。

私の特別。私の意志。全部が瀬織にある。

双子の証だと思っていた瞳の色は、合わせ鏡の名残り。

私の力を瀬織に分けた。

本来ならば途絶えるはずだった弓巫女の血。
大罪を犯したまま、異例の弓巫女が誕生した。