藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「他の巫女なら去った。あやかしも退治され、お前は残された」

青年の低音でありながらもよく通る声が響く。

「そう、ですか」

ランタンを持つ手を寄せ、反対の手で腕を擦る。

いていかれることには慣れていた。

瀬織が私を優先することはない。
そんなのは最初からわかりきったことだ。

それでも現実になればどうしたって苦しい。

こんなに好きなのに、想いは通じない。
強要したくないのに、欲張りになってしまう自分がキライだ。

(名前を呼んでくれた気がしたけど、きっと気のせいね)

私は足手まとい。
助ける価値もないと見切られてしまったのだろう。

無力は悔しい。
情けなさに両頬を叩き、意地で肩を張った

(この程度、慣れてるもん! 瀬織の姉を名乗るには強くなるしかない!)

どうすればそれが実現できるかはわからないけれど……。

「助けていただきありがとうございました」

気持ちだけはめげてたまるかと踏ん張って、青年に深々と頭を下げる。

おぼつかない足取りで青年の横を抜け、空想に瀬織の姿を描く。

母とよく似た大好きな妹。
同じ色の藤色の瞳が、私と瀬織を姉妹だと認識させてくれる。

母の遺言を思い出すも、それはそれだと首を横に振った。

(関係ないわ。私が瀬織といたいから)

こんなにも嫌われているのに、私の中にある瀬織への愛情はちっとも減らない。

報われない想いを抱いて辛いだけのはずなのに、よっぽど私はふてぶてしいのだろう。

未来への期待は捨てられなかった。

「待て」