(はっ! 本当に私を嫌っているから!?)

「やだ! 嫌いなんて言わないで! 今言われたら死んじゃう!」

散々嫌われていたくせに、今は恐ろしくてたまらない。

「バカ! それくらいで死なないでよ!」

「私がどれだけ瀬織を好きか――!」

「ストップ。お前ら落ちつけ」

想いをぶつけあう私と瀬織に、静芽が間に入って肩を押す。

呆れた様子に、私はついムッとして静芽の腕を叩いた。

「お前らがなんでここまで拗れたかわかった。とりあえず妹、お前が吐け」

静芽に制止され、瀬織は小さく震えだす。

静芽がいなくては、話があっちこっちに飛んでしまうだろう。

一度冷静になろうと、私と瀬織は同じように深呼吸をした。

「菊里とは血が繋がっていないと知ってた。……能無し巫女だった理由も」

蔑称”能無し巫女”が本当の名前より私を象徴した。

母が刀巫女・天野 鈴里であり、弓巫女の血を引いていなかったと知る。

その答えにたどり着くまで、自分の無能さが悔しくてたまらなかった。

瀬織に負担をかけ続けた罪悪感にうつむいていると、瀬織が面倒そうに眉間のシワを伸ばす。

「まずは遊磨を探しましょう。ちゃんと話すから」

瀬織を追って私も立ち上がる。

瓦礫周辺を確認して、建物の中に移動する。

瀬織の言葉の続きが気になっていたが、今は巫女としての責務を果たす。

お屋敷で働く人たちを避難させ、静芽には外で遊磨を探してもらった。