「あたりを確認してくる。クソ猿も、一応探す」

静芽が空に飛んで遊磨を探しに出る。

残された私たちは、視線が交わらない。

頑固さは私が上だ。

瀬織が折れてくれるまで穴が開くほどに見つめて離さなかった。

「悪いけど、力は返さないから」

「えっ?」

もごもごしながらの発言に首を傾げ、瀬織を凝視する。

左目を隠しつつ、赤くなった顔を背ける姿に胸がときめいた。

「あたし、絶対に当主にならないといけないの!」

やけくそに訴える瀬織は何を言ってもかわいらしい。

「弓巫女を立て直すには正当性が必要で……」

「あぁ、それね! 大丈夫だよ! 瀬織がお母さまの子だってちゃんとわかってるわ!」

「……何を言っているの?」

今度は瀬織が私の言葉を理解出来ないと眉をひそめる。

何が私たちをすれ違わせているのか、答えが出ずにまばたきを繰り返した。

「話が噛みあってないんじゃないか?」

「静芽さん!」

遊磨探しから戻った静芽が、私たちの会話に一言入れる。

遊磨は一緒にいないので、どうやら見つからなかったようだ。

頭や肩に乗った花びらをはらいながら、ムスッとした様子で歩いてきた。

こうして二人を見比べると、どちらも生真面目な表情が多い。

似通った面をはじめて実感し、いとおしさに笑った。

「あのね、瀬織。私の本当のお母さまは天野 鈴里さまなんだって」

「……何て?」

「? だから私はお母さまと血が繋がっていなくて。だけど私は瀬織を大切な妹だと思って――」

「考えるべきことはそこじゃないでしょ!!」

瀬織が私の腕を掴み、切羽詰まって睨みつけてくる。

「何も知らないあなたに何も話さなかった! 刀巫女として天野家に戻すことだって出来た! だけどあたしはそれをしなかった!」

「どうして?」

「どうしてって……!」

これは私に向けた苛立ちではなく、瀬織が自分に混乱しているだけだ。

私が母と血の繋がりがなかったと知っていたのだろうか。

この口ぶりだと、私が刀巫女になる可能性も把握していたかもしれない。

今の状況は、長年の意地が引くに引けずムキになってのもの。

辛辣な態度をとってきたのは、私のためだったとわかり、うれしくないわけがない。

徹底的に私に巫女を辞めさせて白峰家から追い出そうとしていたとしても、私は瀬織をいとおしく想う。

大罪を犯した父から守るためとしても、やや煮え切らない面がある。

弓巫女の衰退と、私に冷たくあたるのは辻褄が合わないと感じていた。