藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

「菊里―っ!!」

静芽が全速力で滑り込み、私の身体を受け止めると空に急上昇する。

なんとか助かったものの、目線の先にいる瀬織の足元が崩れる光景に悲鳴をあげずにはいられなかった。

「瀬織――っ!!」

もっとも恐れていたこと。
それは瀬織を守りきれないことだ。

”いやだ”。私の平穏は瀬織がいてはじめて保てるものであり、色鮮やかになる。

母を失い、悲しみに暮れていた私に”瀬織の姉”という色をくれた。

私から色を奪えば、たとえ誰かに愛されてもそれは”抜け殻となった私”でしかない。

静芽が瀬織を助けようと、地面から風を巻き起こすが、落下速度には追いつかない。

全力で急降下し、もう少しで手が届く。

そんな距離になったとき、瀬織の眼帯がとれて瞳があらわとなった。

(金色……)

いや、ハチミツ色と呼ぶべきだろう。

金と呼ぶには”瀬織に宿った色”として甘さが足りない。

私の愛した色は藤色。
瀬織は鋭さにハチミツを塗ったような”自慢の妹”だ。

(お母さま! どうかお守りくださいませ!!)

とっさの行動だった。
瀬織が地面に叩きつけられる寸前に、剣を地面に突き刺す。

静芽の力と合わさり、切っ先から花嵐となって瀬織の身体を浮かせた。

(お母さま……)

藤の下で、おだやかに微笑む母の姿が思い浮かんだ。

無我夢中で自分の行動を理解していなかったが、ようやく母との約束が果たせたと熱いものがこみあがる。

静芽に降ろされると、私は瀬織のもとへ心急くまま走りだした。

「瀬織っ!!」

花の絨毯に座り込み、呆然とする瀬織に夢中で飛びつく。

舞いあがった花びらがひらひらと落ち、瀬織の髪に降り積もった。