三方位から同時に迫られ、メアには後退するか空に逃げるしか道がない。

崩れかけのバルコニーでは不利と判断したのか、とっさに水の防御壁を展開し、空に飛びあがった。

水しぶきが落ちてくるなか、私は勝利を確信する。

――ヒュッ!!

メアの行動を読んだうえで、的確なタイミングで矢が飛んでくる。

普段から荒々しい攻撃を繰り出すあやかしと戦っているため、少し動きが早かろうと、攻撃の手数が多かろうと、これまでの努力は裏切らない。

連携すれば邪神だろうが私たちに怖いものはなかった。

「ちっ!!」

メアはあきらめが悪いようで、巨大な水の塊を生成するとなりふり構わず投げる。

遊磨が槍を突きだし、メアの顔面スレスレを貫く。

身体を反らしてメアは避けるも、力のバランスを失って防御壁が下がった。

(今っ!)

この一瞬の隙を逃してはならない。

矢が風を切る気配を感じて、私は迷いなく前へ足を踏みこんだ。

「およずれごと、斬るが務め」

後ろから風が私の背を押してくれる。何も怖いものはない。

刀身に風をまとい、私は一心不乱にメアに飛びかかって剣で薙ぎ払った。

「まことにおかえりくださいませ!!!」

「キャアアアアアアーッ!!?」

甲高い断末魔をあげながらメアが光の膨張にのまれていく。

私がメアを斬ると同時に、瀬織が放った”二本目の矢”がメアの目を射抜いた。

巨大な白い花が咲き、花びらが舞い散る。

あっという間にメアを飲み込んで、悲鳴が徐々に小さく消えていった。

(倒せた?)

肩で呼吸しながら、確かに感じた手ごたえにゾクッと震えあがるのを感じた。

私と瀬織の力が合わさり、一つの大きな道を開けたような、そんな感覚だった。

胸が熱くなり、喜びのまま瀬織と気持ちを分かち合いたいと振り返る。

「せお――」

その瞬間、瀬織に向かっていた巨大な水の塊が重力を失い、バルコニーに落下する。