遊磨の声に上書きし、瀬織の姿を見て安堵し叫ぶ。

うるさい、と不満げにしていたが、私の瀬織への気持ちはどこまでも一途だと自覚した。

血の繋がりなんて関係ない。瀬織は私の妹で、いとしい存在だ。

「まったく、あなたたちって変よ。特にあなた! おかしいんじゃないの!? そんなデレデレして!」

「おかしいのはそっちよ! こんなに魅力的な妹は他にいないわ!」

メアが指をさしてきたので、私は青筋をたてて食ってかかる。

「菊里、そこまで。妹が引いている」

「あ……」

怒りに任せて叫んだことをすぐに後悔する。

瀬織の苦りきった表情に、感情をさらけ出しすぎたと、オロオロして肩を竦めた。

(やっちゃったよぉ……。カッコいいお姉ちゃんって思われたいのに)

気持ちはいつも空回りだ。

「静芽、遊磨。あたしがメアにとどめを刺す。他は任せたわ。……菊里も」

返事を待つことなく、瀬織は手すり壁を足場に走りだし、暗闇を利用する。

「アタシから逃げられると思わないでくれる!?」

メアが空中で水の足場をつくり、瀬織めがけて手を振り下ろす。

蛇の形をした水が矢のように何本も突進していった。

「遊磨さまに守れないものナーッシ!!」

臨機応変に遊磨がメアの前に出て、槍を回して蛇を打ち落とす。

ニヤッとしながら巧みに動く姿はとても鮮やかで、目を見張るものがあった。

苛立ちを募らせるメアはバルコニーに着地すると、眉をつりあげて遊磨を睨みつける。

怒りで髪の毛が揺らめいており、目がギラギラして獣のようだ。

冷静さを欠いているこの状況を好機とみて、私は静芽とともにメアに向かって急降下する。

メアを叩き切ろうと、全力で剣を振りおろした。

攻撃に気づいたメアは慌てて避けるも、追い打ちをかけるように遊磨が詰め寄っていく。

私は静芽から離れ、遊磨と挟み撃ちにする形でメアの前に突っ込んだ。