「――静芽さん!」

「あぁ!」

私が声をかけるよりも早く、静芽がメアに向かって向かい風を吹かす。

静芽の力添えで剣に風をまとうと、私はありったけの力を込めてメアに斬りかかった。

「あら、かわいい攻撃だこと」

メアは身軽にひるがえって攻撃をかわし、次の手を放つ。

水の粒が豪雨のように襲ってきたが、静芽が風で防御壁を作り、攻防戦となった。

風を扱うのは天狗の十八番と言わんばかりの卓越した動きに、私はつい感嘆の息を漏らす。

(瀬織っ!!)

剣を握りなおして急ぎバルコニーへ目を向ける。

水の弾丸が襲ったことで砂煙があがり、足場も減っていた。

瀬織の姿が見えないと気が気でない。

焦りがつのるなか、砂煙の向こう側に影が現れる。

その影は地面に槍を突き刺して、高跳びのように一気に距離を詰めてきた。

「ひょーっ……なかなかにおっかねえな!」
「遊磨さんっ!!」

遊磨がバルコニーの端まで飛び出し、上空に陣を取る私たちの盾となった。

メアの注意が逸れ、遊磨に視線が向いているメアの妖艶な横顔に赤い筋が入る。

頬を撫でると、メアの手のひらにべったりと赤い液体がこびりついていた。

「はっ……はああ!? なにこれ、イヤーッ!!」

「助かったわ、槍男。ちょっとは役立つじゃない」

 瀬織がバルコニーの手すり壁を飛び乗って、遊磨に並ぶ。

「おいおい。そりゃあちっと可愛げがない……「瀬織っ!」」