藤に隠すは蜜の刃 〜オッドアイの無能巫女は不器用な天狗に支えられながら妹を溺愛する〜

静芽の腕に安心しきっていたと恥じ、気を取り直してメアに向かって叫ぶ。

恋が実って浮かれていたと、プライベートの顔を捨てると、それを見抜いたメアが鼻で笑う。

人の恋路をバカにして、とメアの愉悦な態度に拳がワナワナと震えた。

「あなたと妹ちゃんに似た関係性、と言えばいいかしら?」

まったく意味がわからない。

むしろ私の侵してはならない領域を土足で踏み荒らされた気分だ。

(ふざけないで! 瀬織との関係性は私たちだけのものよ!)

「あなたと誰が似た関係性ですって!? 瀬織は私だけの妹よ! いっしょにしな――」

「勝手にあなただけのものにしないでちょうだい」

――シュッと、風を切る音がした。

割れたガラス扉の向こう側から矢が飛び、鋭い光となってメアをとらえる。

だがメアは笑顔のまま、水の球を投げて矢と相殺させた。

水が飛び散り、光をまとった矢は花とならずに砕けてしまう。

瀬織は舌打ちをすると、メアを見据えて弓を構えなおした。

「あなたは邪神。気配があやかしと違うわ。どこの誰か、答えなさい」

「半分正解。あなたは気配を読むのが得意なのね。……お姉さんは鈍いみたいだけど」

瀬織の言葉にメアは面白がって拍手をし、静芽とともに空で威嚇する私を鼻で笑った。

腹立たしいので殴りたいところだが、気配を読めなかったのは事実。

静芽がいなければまともに攻撃を食らっていたかもしれないと深呼吸をした。

「気配を読むのは苦手だけど、勢いはあるわ!」

(瀬織が動きやすいように気を反らすくらいなら出来るんだから!)

今まで足手まといと指をさされた分、まわりの動きをとらえるのは上手いと自負している。

能無しは能無しなりに行動を考えているとふんぞり返った。

「ふーん。まぁ、あなたはそんなに怖くないわ。そっちの妹の方が取りすぎたのかしら? いずれにしてもあなたには良いことなしの関係ね」

「……何言ってるの?」

(良いことなしの関係? 何言ってるの、この人)

つくづく幻滅しかない、とあきれてため息が出てしまう。

「あなた、頭おかしいのね。瀬織が妹なんて良いことしかないよ」
「はぁ?」
「あ、あんた何をバカなことっ……!」

私の言葉にメアは怪訝な顔をし、瀬織が絶句する。

そのわずかな隙にメアはバルコニーから飛びあがり、水の弾丸を瀬織に放った。