廃工場の一角で、不知火と瑠璃は束の間の休息を取っていた。瑠璃は男装をしているが、その仕草には確かに女性らしさが宿っている。

「なあ、瑠璃」

「何？」

「なぜ俺なんかに構う？ 俺は黒者だ。幾度も人を殺してきた…」

瑠璃は振り返ると、真っ直ぐに不知火を見つめた。

「アンタが人を殺したのは、生きるためでしょう？誰だって生きる権利はある。黒者だって、白者だって……」

「綺麗事だ」

「綺麗事じゃない」瑠璃の声に力がこもる。「私はアンタを見てきた。アンタは本当は優しい人だって知ってる」

不知火の表情が動く。誰かに理解されるという感情を、彼は久しく忘れていた。

「俺は…人と仲良くなるのが下手だ。厄介な性格だし——」

「それでもいい」瑠璃は微笑んだ。「私はアンタが好きだから」

告白だった。しかし不知火は首を振る。

「俺みたいな男を好きになっても...苦労するだけだ……」

「苦労なんて怖くない。アンタが一人で戦うなら、私も一人で戦う。アンタを守りたいから、白者を…この世から一人残らず抹殺したい！」

瑠璃の瞳に宿る決意の炎。それは不知火を驚かせるほど強烈だった。