夜空に最初の花火が打ち上がった瞬間、会場に響く歓声。巴瑠たちは海沿いの小高い丘で、5人並んで花火を見上げていた。

「きれい……」美瑠が思わず呟く。

「沖縄の花火は特別だよね」光璃が答える。「海とのコントラストが美しいの」

珠梨は持参したラジオで音楽を流しながら、「この曲、花火にぴったりでしょ？」と嬉しそうに言った。

瑠偉は新しいメガネで花火をじっと見つめている。「さっきはありがとう、美瑠ちゃん。君がいなかったら、僕は今頃パニックになってたよ」

「どういたしまして」美瑠が小さく微笑んだ。

巴瑠は仲間たちの笑顔を見回しながら思った。みんなでこうやって過ごす時間が、どれだけ大切なものなのかを。

「あの……みんな」美瑠が意を決して話し始めた。「実は私、今日の競争の結果で、ある決断をしようと思ってたの」

4人が美瑠の方を向く。

「もし巴瑠くんが勝ったら、お父さんお母さんに反発して、転校を拒否しようって。そして……」美瑠の頬が赤くなった。「巴瑠くんと一緒にどこか遠くに行こうって」

「えっ！」巴瑠が驚いた。

「でも、今日みんなと過ごして分かったの。本当に大切なのは、誰か一人と逃げることじゃなくて、みんなで支え合うことなんだって」

大きな花火が夜空に花を咲かせた。その光に照らされた美瑠の顔は、もう最初に会った時のシャイな少女ではなく、自分の想いをしっかりと伝える強さを持っていた。

「私、転校は避けられないけど、みんなとの友情は絶対に忘れない。そして、いつか必ずここに戻ってくる」

「約束だね」巴瑠が手を差し出した。

5人の手が重なった瞬間、夜空で一番大きな花火が炸裂した。

光璃が静かに言った。「この花火、下から見ても横から見ても、みんなで見ているから美しいのね」

珠梨が音楽のボリュームを上げた。「この歌、私たちの歌にしない？『青と夏』。この夏をずっと覚えているために」

瑠偉がメガネを押し上げながら微笑んだ。「僕たち、きっとずっと友達だ」